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スキージャンプの実践的トレーニング

2022.02.10

スキージャンプの実践的トレーニング

スキージャンプの実践的トレーニングに焦点にあてたエビデンスを紹介したいと思います。

 

スキージャンプ男子ノーマルヒルでの快挙!!

北京オリンピックのスキージャンプ男子ノーマルヒルにおいて、小林陵侑選手が金メダルを獲得しました。日本選手が金メダルを獲得したのは1998年の長野オリンピック以来、24年ぶりの快挙です。スキージャンプにおいて、Take-off(踏み切り動作)が最も重要な局面であり、トレーニングの重要な優先事項の一つであると言われています。そこで、国際的にはどのようなトレーニング方法が用いられているかを紹介したいと思います。

 

イミテーションジャンプ(模倣ジャンプ)&スクワットジャンプ

実際のヒルジャンプのトレーニングは非常に時間を費やすため、スキージャンプのトレーニングセッションでは、イミテーションジャンプ(Fig1:Lorenzettiら 2019)とスクワットジャンプがよく用いられており、国際的に確立されたトレーニング方法のようです。

ヒルジャンプではヘルメット、ジャンピングスーツ、ジャンピングブーツ、ウェッジを装備して競技をしますが、トレーニング時にはTシャツと室内シューズという軽装の場合が多いです。この点について、実際のジャンプではジャンピングブーツを履くため、足関節の動きが制限され踏み切り動作に影響することが指摘されています。この指摘からより実践的なジャンプトレーニングに近づけるために、ジャンプトレーニングではジャンピングブーツを履くことが推奨されています。

Lorenzettiらの研究(2019)では、上記の様々なジャンプトレーニングと実際のヒルジャンプとの関連性についてバイオメカニクス的な検討をした結果、3つの異なる条件でのイミテーションジャンプが実際のヒルジャンプと最も類似していました。しかし、ヒルジャンプと大きく異なる点は、空気力による揚力が発生することです。例えば、トレーニングにおいて、イミテーションジャンプに加えて弾性バンドを用いて揚力を模倣するなどの工夫が必要かもしれません。また、イミテーションジャンプを実施する際に、ジャンピングブーツを履いた場合と室内シューズを履いた場合を比較しても測定項目間の違いが認められませんでした。

結論として、室内シューズあるいはジャンピングブーツに関わらずイミテーションジャンプ2(平坦なところでローリングプラットフォームに乗る)が最もヒルジャンプに近いトレーニングであることが明らかとなりました。また、踏み切り時の膝関節のアライメントが外反しない動作習得はパフォーマンス向上のキーポイントであることも指摘されています。つまり、膝関節のアライメントが外反しないような下肢動作のコーディネーショントレーニングは必要不可欠となるでしょう。

 

参考文献

Lorenzetti S, et al. Conditioning exercises in ski jumping: biomechanical relationship of squat jumps, imitation jumps, and hill jumps. Sports Biomech, 2019, 18(1): 63-74.

Pauli CA, et al. Kinematics and kinetics of squats, drop jumps and imitation jumps of ski jumpers. J Strength Cond Res, 2016, 30(3): 643-652.

 

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